■約束■

私の最期は笑顔で送ってください。
なので生あるうちは笑っていましょう。
私という個体があるうちは。
手を伸ばし触れる物があるうちは。
地を踏みしめる事ができるうちは。
未来を願う事が許されるうちは。
笑って全てを送りましょう。
今の私は此処にしかいませんから。
それでもいつか思い出していただけるならば何処にだって現れます。
あなたの記憶の端に生きましょう。
忘れないでください。
忘れません。


2006 2 無伊

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■未来■

青快な空を仰いだ。
ちっぽけな自分がさらに小さく見えて。
だから開いてた手を強く握った。
強くなれる気がしたんだ。
鬱陶しい髪を切った。
落ちていく線が自分に重なって。
だから何も見えないように目を瞑った。
新しくなれる気がしたんだ。
周りの物を捨てた。
白くなった世界にとり残された気がして。
だから旋律を奏でた。
優しくなれる気がしたんだ。
日常は変わらないままだけど。
少しづつ自分になれてきたよ。
紐が弛まって歩けるようになったから。
もう大丈夫。
生きていける。


2006 3 無伊

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■貴方宛■

鉄塔の中から今日も空を眺めます。
全てを忘れられる瞬間。
私は風に変わりました。
地から足を離し宙に向かって飛びます。
貴方を思い出した瞬間。
私は人間になれました。
戻れない過去を見ながら時間に包まれます。
涙が流れた瞬間。
私は記憶になりました。
優しさに手を取られて歩きます。
光が差した瞬間。
私は無くなりました。
思い出を夢に見ました。
貴方を恋しく思いました。
もう触れられません。
私は溶けてしまったのです。
それでも寂しさを感じません。
いつでも見守っていますから。


2006 3 無伊

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■逃亡■

イヤホンから流れ込むリズムに揺られて。
裸足のまま出かけた。
何もない場所を求めて歩いて。
全てを忘れたかった。
照りつける太陽が眩しくて。
瞼の裏の暗闇に溶けた。
逃げたかったんだ。
あの日常から。
非日常を求めてたわけじゃないけど。
居なくなりたかった。
ブラウン管の中の世界も。
人混みの中の世界も。
探していたものとは違った。
掴めるものは何もなかった。
間違ってしまったんだ。
だから駆け出した。
逃げ出した。
泣き喚きながら。
許してほしくて。
解放されたくて。
だからごめんなさい。
世界の最後に見た景色が。
もう思い出せない。


2006 3 無伊

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■夢と現実■

見上げた青空はとても綺麗だけど。
その下で営まれる日常はくすんで前が見えない。
今日も誰かが泣いているよ。
助けを求めて手を伸ばしているよ。
振り向いてくれる人は居たかい?
所詮そんな世界。
見上げた星空はとても綺麗だけど。
その下で眠る夢は靄がかかって進めない。
今日も誰かが祈っているよ。
明日を願って小さな声をあげているよ。
言葉を掛けてくれた人は居たかい?
所詮そんな世界。
お偉いサマのハリボテな表情と事務的な単語で無力な星がまた増えた。
いい加減にしろ。
喧嘩なら自分等で片付けてくれ。
もう誰も巻き込むんじゃねぇ。


2006 3 無伊

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■色■

痛い雫は青くなって。
灰色の雲から滑り落ちる。
赤い傘は揺れて揺れて。
無色の私を隠して進む。
水滴に触れてはいけません。
白の仮面が染まってしまう。
さぁ黒い衣裳を身に纏い。
今日は遠くへ出掛けよう。
透明な世界はどこまでも広く。
続く。
遠退く。
色の在る街。
明日は何色に塗られるかな。
広く。
果てなく。
透明な世界。
さぁ黒い衣裳を身に纏い。
今日は緑を歌いましょう。
透明な世界はどこまでも広く。
続く。
遠退く。
色の在る街。
未来は何色に塗られるかな。
高く。
限りなく。
透明な宙。


2006 3 無伊

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■自問自答■

求めたのは永遠だった。
消える事ない感情。
欲したから崩れた?
浮き世を走り続けても転ぶばかり。
欲求を捕まえても零れてしまう。
嗚呼なんと滑稽!
願いなら風に吹かれる物と決まっているではないか。
薄っぺらな私にはお似合いだ。
いらぬ情緒なぞ身を滅ぼすだけと知っている筈。
何故棄てられぬ?
塵のようなこの世界に!
美しい儘では生きて往けないのさ。


2006 3 無伊

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■箱■

もし背中に羽が生えてたら。
どうしようか。
ずっとずっと遠くまで飛んでいこうかな。
今なら行ける気がするの。
もし目の前に水があったなら。
どうしようか。
ずっとずっと深くまで沈んでいこうかな。
今なら行ける気がするの。
この目も耳も鼻も口も。
手も足も全部。
いらないから。
全部いらないから。
この檻から外へ出ていい?


2006 4 無伊

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■PIERROT■

「決めた筈なのに。
 もう後悔はしないと。
 遠くへ離れてしまう事に反対はしないと。
 それなのに何故心は軋むの?
 苦しいと悲鳴をあげている。
 誰か助けて、と。
 どれだけ強がってみせても。
 自分に嘘を吐き通すことはできないの?
 悲しくて。
 泣きたくて。
 貴方を探してしまうのです。
 必要な居場所なのです。
 この声が聞こえますか?
 届いたならば抱きしめてください。
 もう放さないでください。」
そう言って道化師は瞳を閉じました。
涙が一筋頬を伝って。
これで戯曲は終わりです。


2006 5 無伊

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■My Loving...■

例えば願いが叶うなら。

生まれ変わってもまた同じように。

ずっと友達でいてください。

あなた達に出会えてよかった。

こんなにも大切だと思える。

愛すべき友達です。


2006 7 無伊

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